下肢静脈瘤の手術治療

はっきりとした症状がある方や血栓性静脈炎、色素沈着や潰瘍形成などの合併症を生じた患者様は手術治療が必要です。

静脈の逆流が高度の場合には原因を取り除くしっかりとした治療です。弁が壊れて拡張した表在静脈を結紮(縛ること)しただけでは 静脈が通り道として残るので再発します。したがって、ストリッピング手術やレーザー・高周波による血管内焼灼術を行い、静脈の全長にわたり完全に逆流を止める必要があります。

当院では保険適応になったレーザー・高周波による血管内焼灼術も行っています。 下肢静脈瘤の血管内焼灼治療はこれまで皮膚を切って、抜いたり縛ったりしていた血管を、皮膚を切らずに内側から焼いて固めてしまう方法です。 表在静脈がなくなっても血液は深部静脈を通り心臓に帰るので問題はありません。

手術は基本的には全身麻酔で行いますので1泊2日で入院していただきます。手術翌日には歩行ができ退院できます。確実な手術を行えば再発もなく、弾性ストッキングを長期間穿くことも必要ありません。 また、拡張した静脈瘤を、部分的に小切開を加えて切除します。

麻酔方法については、病変の範囲が狭い場合は局所麻酔での手術が可能です。ただし、局所麻酔では麻酔薬注入時は痛みを伴うこと、完全に痛みがゼロにならない場合があること、手術中を通じて不安や緊張が続く可能性があることなどをご留意ください。この場合は日帰り手術が可能です。

全身麻酔に不安を感じる方もいらっしゃいますが、当院では麻酔専門の医師が行ないますのでご安心ください。病変の範囲や手術時間などを考慮してご相談の上、麻酔方法を決めていきます。

ストリッピング手術(伏在静脈抜去術)

下肢静脈瘤の根治的な治療法として古くから行われている手術です。弁不全を起こしている静脈を引き抜いてしまう方法です。足の付け根や膝など皮膚を2~3cm程度切開し、弁不全を起こした表在(伏在)静脈の中に手術用ワイヤーを通して、 この血管を引き抜きます。再発率が低い治療方法です。全身麻酔や下半身麻酔、局所麻酔(TLA麻酔)で行います。入院が必要な場合があります。

  • メリット
    再発率が低い。安定した治療成績。
  • デメリット
    入院が必要な場合がある。皮下出血、痛み、神経障害などの後遺症を伴うことがある。下半身麻酔が必要となることがある。

ⅰ)大伏在静脈瘤ストリッピング/ⅱ)小伏在静脈ストリッピング/ⅲ)選択的ストリッピング ドップラー血流計により伏在静脈の逆流の範囲が同定できるようになり、術後神経損傷の軽減(大伏在静脈抜去後→伏在神経損傷、小伏在静脈抜去後→腓腹神経損傷)や健常な伏在静脈の温存を図るため逆流のある伏在静脈のみを抜去する、選択的ストリッピングが開発されました。

レーザーによる焼灼術

血管内レーザー治療(EVLT:endovenous laser treatment)とは、逆流のある静脈内にレーザーのファイバーを入れ、血管の壁にレーザーをあて静脈を熱で焼き、 閉塞させる治療法です。

ELVeSレーザー(エルベスレーザー)が薬事承認され、2011年1月1日より、この装置を用いた静脈瘤レーザー血管内治療が保険適応となりました。この血管内レーザー治療は、弁不全を起こしている表在(伏在)静脈の中に細いレーザーファイバーを挿入し、 レーザーで静脈の内側を熱で焼き、閉塞させる治療法です。

レーザーで焼かれた静脈は閉塞して血液が流れなくなり、その後数ヶ月かけて繊維化します。 長年、根治的な手法として行われて来たストリッピング手術(静脈抜去術)とほぼ同じ効果が得られます。 局所麻酔(TLA麻酔)で行います。皮膚を全く切らないで細い針で皮膚の上から静脈を刺してファイバーを静脈の中に入れる方法(穿刺法)です。

  • メリット
    負担の少ない治療であるため局所麻酔、日帰り手術が可能。痛み、神経障害などの後遺症はほとんどない。 ストリッピングと同等の効果があり、穿刺法では切開を必要としないため、審美的に優れている。
  • デメリット
    穿刺法では静脈の中にできた血栓が伸びて、深部静脈血栓症を起こすことが稀にある。その血栓が肺に流れると急性肺塞栓を起こすことが極めて稀にある(発症率0.05%)。
    日本ではまだ新しい治療法であり長期成績が出ていない(海外ではストリッピングと同等の効果があることが証明されている)。保険適用となった装置以外での治療は自由診療である。

多くの下肢静脈瘤では血管内焼灼だけでは治療出来ない部位(ふくらはぎの瘤)がありますが、当院では原則として血管内焼灼治療と同時に静脈瘤切除術を行うことで追加治療を回避するよう努め、1日で完治させるよう取り組んでいます。

高周波による焼灼術

血管内高周波治療は弁不全を起こして逆流している静脈内に細いカテーテルを入れ、血管の壁に120℃の高周波(ラジオ波)を当てて、静脈を熱で焼くことで閉塞させる治療法です。
焼灼(熱で焼く)エネルギー源がレーザーでなく高周波と言う違いであり、手術方法は基本的にレーザー治療と同じです。従来から当院で行っているレーザー治療と同等以上の治療効果が得られ、さらに術後の痛みや腫れ、皮下出血が少ないなど、より負担の少ない治療となります。

日本では2014年6月よりこの機器および治療法が薬事承認され、この機器を用いた静脈瘤の血管内治療が保険適応となりました。なお、治療にかかる費用はレーザー治療とまったく同じです。

  • メリット
    従来、当院で行ってきたレーザー治療よりも、術後の痛みや皮下出血が少なく、より低侵襲な治療法である。従来のレーザー治療よりも手術時間が短縮できる。治療成績は同等以上であり、また、深部静脈血栓症などの合併症も少ない。
  • デメリット
    ごく短い範囲の病変の治療には適していない。

多くの下肢静脈瘤では血管内焼灼術だけでは治療できない部位(ふくらはぎの瘤)がありますが、当院では原則として血管内焼灼治療と同時に静脈瘤切除術を行うことによって追加治療を回避するよう努め、1日で完治させるよう取り組んでいます。

接着材による塞栓術

拡張した静脈瘤の血管内に接着材を注入し、血管壁を接着させ閉塞させる方法です。使用する接着材は、「シアノアクリレート」といい、医療用として既に長い使用経験(皮膚の接着、脳動静脈奇形の塞栓術など)があります。民生用などで広く使用されてきた瞬間接着材と同様の成分で、水と反応して素早く固まります。接着材治療が対象となる静脈瘤は、主に大伏在静脈または小伏在静脈の弁不全に起因する「伏在型」静脈瘤です。

海外での治験データでは、3か月後の完全閉塞率は、従来の治療と比較して劣らないことが分かっています。また、5年間の追跡成績では、統計学的な有意差はつきませんでしたが、接着材治療のほうが良好でした。

日本では2019年12月に保険診療として承認された新しい治療法です。

  • メリット
    合併症の少なさと低侵襲性にあります。
    血管内焼灼術では熱による神経障害や皮膚の色素沈着などが若干問題となってきましたが、本治療法ではほとんどありません。したがって、神経が近くにあって焼灼術では手を出しにくかった膝下の大伏在静脈や小伏在静脈の末梢部なども治療できるようになりました。
    また、カテーテル挿入部のみの局所麻酔だけですむことになり、日帰り手術に適しています。さらに、この治療法では術後の弾性ストッキングの着用は原則不要です。
  • デメリット
    治療から1~2週間後に、治療した血管に沿った皮膚の発赤、腫れ、痛みやかゆみが6~7%の方に認められます。原因は、異物反応による一時的な炎症であることが多いのですが、一部(2~3%)に接着材による遅延型アレルギー反応があります。全身に蕁麻疹が広がり、一時的に抗アレルギー薬やステロイド剤の内服が必要となることがあります。
    したがって、接着材やホルムアルデヒド、複数の薬剤や食物に対するアレルギーがある方は手術の対象から除外されます。また、アトピーなどアレルギー疾患や塗料・染料を取り扱う職業をもつ方も避けたほうがよいです。
    注入した接着材は半永久的に体内に残存するため、また、長期成績に不明な点もあるため慎重な経過観察が必要となります。

静脈瘤切除

多くの下肢静脈瘤では、ストリッピング手術や血管内焼灼術で伏在静脈の逆流を止めただけでは静脈瘤は完全に消失しません(特に、ふくらはぎの静脈瘤)。静脈瘤部に5~10mmの小切開をおき静脈瘤自体を摘出します。血管内焼灼、塞栓治療と同時に静脈瘤切除術を行うことで追加治療が回避でき、1回の治療で静脈瘤を完治させることができます。

硬化療法

静脈瘤が起こっている血管に固める薬(硬化剤)を注射し、弾性包帯で圧迫して血管自体を固め、静脈瘤を潰してしまうという治療法です。固まった血管は次第に萎縮して消えていきます。

  • メリット
    外来で治療ができる。穿刺で行うため傷跡がほとんど残らない。
  • デメリット
    硬化剤注入部に色素沈着することがある。しこりや痛みが残ることがある(時間の経過とともに消失する)。 硬化療法単独では、表在(伏在)静脈の弁不全による血液の逆流を改善することができないため、すぐさま再発してしまう。

高位結紮術

下肢静脈瘤の多くは、足の付け根(そけい部)の静脈の弁が壊れて、血液が逆流することによって生じます。高位結紮術(こういけっさつじゅつ)は、足の付け根の皮膚を2~3cm程度切開し、 弁不全を起こした表在(伏在)静脈の根部をしばって(結紮)切り離し、弁不全が原因とする血液の逆流を止める治療法です。局所麻酔下で行え、手術は非常に簡便ですが、 高位結紮術のみでは数年後の再発が多いことがわかっています。

  • メリット
    局所麻酔で行え、手術が簡便。術後の痛みや出血が少なく、体への負担が少ない。
  • デメリット
    数年後に再発が多くみられる。

手術の危険性・血栓症について

下肢静脈瘤の手術合併症は、皮下出血・血腫、大腿部疼痛、つっぱり感、神経障害(伏在神経障害によるしびれ・無知覚)などです。また、血管内焼灼術では皮膚熱傷や深部静脈血栓症を形成する場合や、血栓が肺動脈につまり肺塞栓症を起こす可能性(発症率0.01%未満)があります。血管内塞栓術(接着材療法)では術後の血栓症はきわめて稀といわれております。

術後の経過

横浜戸塚下肢静脈瘤センターでは、基本的に全身麻酔による1泊2日の入院治療を行っております。手術当日に入院していただき、手術終了後は一般病室に移動し、術後の処置を受けます。その後は回復の程度により歩行し、食事を召し上がっていただきます。手術翌日はガーゼ交換の後、歩いての退院となります。

退院後1週間で初回の外来を受診いただき、その後は1か月後となります。また、手術後は弾性ストッキングを約3週間はいていただきます。静脈瘤が残った場合には外来で硬化療法を追加する可能性があります。
なお、接着材による塞栓術の場合、原則として弾性ストッキングの着用は不要です。

なお、静脈瘤切除や結紮手術のみ、あるいは血管内焼灼・塞栓術でもご希望があれば日帰り手術も行います。下肢静脈瘤についてご診察希望やご相談がある方は遠慮なく下記連絡先までお問合せください。

お問い合わせ

医療法人横浜未来ヘルスケアシステム 戸塚共立第2病院
横浜戸塚下肢静脈瘤センター

0570-00-3205

受付時間 平日8:30~12:00/13:30~16:30 土曜8:30~12:00
休診日:日曜、祝日

expand_less ページのトップへ戻る